コロナ大仏造立

応援メッセージ

松岡正剛 氏

 
編集工学研究所所長・角川武蔵野ミユージアム館長、「松岡正剛(まつおかせいごう)」氏より、本プロジェクトに応援コメントをいただきました。
 

✳︎ 展覧会現代アートを解剖する Vol.2 風間天心」(’テラス計画/札幌)での推薦文を転載しております。
 
 

「穢土(えど)と浄土をつなぐ  風間天心の挑戦」
 

 神社仏閣からアートが退嬰(たいえい)して久しい。文化財法や消防法や観光制度が「芸術としての寺社」をさまざまに分割してしまったのであろう。
 

 かつては寺社こそが知のミュージアムであり、美のギャラリーだった。またかつては神官や僧侶がすばらしいアーティストや工作者を兼ねていた。日本の水墨山水の成果の大半は明兆・牧谿・雪舟らの禅僧たちの技によるものだったし、枯山水や床の間の造形も夢窓国師や三阿弥などの宗教者たちの工夫によるものだった。寺社はすぐれた芸能空間でもあった。
 

 今日、宗教とアートと芸能と美術館とはまったく別なものになっている。それぞれ所属する社会が別なのだ。そういうなかで寺社が生まれ変わるには桎梏(しっこく)が多すぎる。それよりも新たな空間を芸術行為が見せていくほうがいいのかもしれない。
 

 風間天心の挑戦はこういうなかに生まれた。五大・五智・五行・五色を組み合わせ、緻密な構成に転位させ、その荘厳(しょうごん)に人々を誘うという計画である。そこには結界するものの力、遊行するものの心、祈るものの覚悟がなければならない。
 

 世界中にコロナ禍が広まっているこのとき、ソーシャル・ディスタンスが求められている現在、風間天心はむしろ本来のディスタンスとは何かを問うているのであろう。私たちは穢土と浄土をまたげる者であったはずなのである。
 
 

松岡正剛/編集工学研究所所長・角川武蔵野ミユージアム館長

1944年1月25日、京都生まれ。80年代、編集工学を提唱。情報文化と情報技術をつなぐ方法論を体系化し、様々なプロジェクトに応用する。一方、日本文化を独自の視点で読み解く著作やテレビ番組の監修も数多く手掛ける。2000年「千夜千冊」の連載を開始。同年、eラーニングの先駆けともなる「イシス編集学校」をネット上に開講し、編集術とともに世界読書術を広く伝授している。著書に『知の編集工学』、『日本問答』(田中優子氏との共著)シリーズ「千夜千冊エディション」ほか。

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